最近、話題のドリッパーであるORIGAMIドリッパー「全15色」※発売当初は16色というカラーバリエーションに加え、近年のハンドドリップチャンピオンシップなどでも使用するバリスタが増えたことで、一気に世界的注目を浴びています。
2022年には、磁器製ドリッパーに加え「ORIGAMIエアー」という樹脂製のドリッパー全6色も加わったことで、アウトドアなど、さらに使えるシーンが増えたと喜ばれています。
当店でも、ORIGAMIドリッパーを全種取り扱っているため「ORIGAMIドリッパーってどうですか?」とご質問をいただくことがあります。このドリッパーはどんな点がユニークなのか、他のドリッパーとどのような違いがあるのでしょうか?
ペーパーフィルターが2種類使える
ORIGAMIドリッパーの最大の特徴はなんといっても「ペーパーフィルターを2種類使える」ことにあるでしょう。
ORIGAMI公式が販売している円すい形のペーパーフィルターを使ってもいいですし、Kalita社から販売されている「ウェーブフィルター」を使用することもできます。
このペーパーフィルターの使い分けによって、ドリップコーヒーの味わいが大きく変えられるのが魅力のひとつです。
たとえば、円すい形のフィルターを使った場合、ドリッパーの内側の溝(コーヒー業界では”リブ”と呼びます)とペーパーフィルターの間にすき間ができます。このすき間があると一般的には、コーヒー液が横から漏れやすくなり、抽出スピードが速くなると言われています。
「リブとペーパーの間にすき間があるとコーヒー液が横漏れする」というのはあくまで一説で、「コーヒーの炭酸ガスが抜けるから」などいろいろな説明があります。ただ、大事なのは、円すい形フィルターを使うと、比較的すっきりとした味わいのコーヒーになるということです。
一方で、ウェーブフィルターを使うと、ORIGAMIドリッパーのリブにウェーブフィルターのひだがピタッとはまるため、ドリッパーとの間にすき間がなくなります。つまり、湯抜けがゆっくりになって、しっかりした味わいのコーヒーになりやすいということです。
ORIGAMIに限らず、ドリッパーのリブについては、コーヒー器具メーカー各社がいろいろなこだわりを持って作っていますが、一般の方には「リブがそんなに味に影響するの?」と思われるかもしれません。
ですが、ORIGAMIドリッパーで2つのペーパーを飲み比べていただければ、間違いなく、ペーパーフィルターとドリッパーのすき間を生む“リブの重要性”を感じてもらえることでしょう。
“湯を溜める”ドリップに向いている
さて、2種類のペーパーフィルターが使えるORIGAMIドリッパーですが、どちらかというと、大会などではKalitaのウェーブフィルターを使う人が多いようです。
なぜかというと、ORIGAMIはほかのドリッパーに比べて「ドリッパー内にお湯をためてドリップする」淹れ方に向いているからです。
ORIGAMIはほかの円すい形ドリッパーに比べると明らかに側面の傾斜が緩く作られています。つまり、ほかのドリッパーよりもゆっくり抽出することに向いているドリッパーと言えます。
ただ、傾斜が緩いと、同じ量のコーヒー粉を入れても、傾斜がきついドリッパーに比べて、横にコーヒー粉が広がるぶん、逆に縦のコーヒー粉の層(コーヒー業界では濾過槽”ろかそう”と言います)が短くなってしまいますので、円すい形フィルターのような「抽出が速いペーパーフィルター」を使ってしまうと、普通のドリッパーよりも湯抜けがよすぎることもあります。
そのため、ウェーブフィルターのように底面が平らで、リブを埋めてゆっくり落ちるようなペーパーフィルターを使うことで、底面にコーヒー粉とお湯がたまり、しっかりとコーヒー液を抽出することができるようになるのです。
特に、もともと炭酸ガスが少ない浅煎りコーヒー豆は、ドリッパーの底にコーヒー粉がたまりやすく、時間をかけて抽出することで抽出効率が上がりやすくなるため、ORIGAMIドリッパーとの相性がいいと言えます。
最初の発売当初は違う形状だった
ちなみに、「ORIGAMIドリッパーはウェーブフィルターが向いている」というのは、なにも適当なことを言っているわけではありません。そもそも、現行のORIGAMIドリッパーはKalitaウェーブフィルターがあったからこそ生まれたドリッパーであると言えます。
実際、昔のORIGAMIドリッパーは今と似ても似つかない形のドリッパーで、円すい形フィルターを折りたたんで使うことがおすすめされていました。
それが変わったのはほんの数年前、Kalitaのウェーブドリッパーという「ためるドリッパー」が日本で大きな注目を浴びたからです。当時は、円すい形ドリッパー、特にHARIO社のドリッパーがアメリカから逆輸入する形で入ってきて、多くのバリスタが使用していました。
一方で、HARIO社のドリッパーはリブが全面に施されており、円すい形のなかでもすっきりとした味わいというのが特徴で、もっとゆっくりと保水しながら淹れるドリッパーが注目を浴びてくるようになりました。それがKalitaのウェーブドリッパー。
実際、Kalitaのウェーブドリッパーは扇形ドリッパーのような保水力と、円すい形ドリッパーのような抜けの良さを両立させた優れもので、当時は「コーヒーハンター」や「世界一のバリスタ」がこぞって紹介していたのを覚えていますし、今でも人気のドリッパーのひとつです。
そして、ORIGAMIドリッパーが形を変えたのもちょうどそのすぐ後。Kalitaのウェーブフィルターがピタリとはまるような形に生まれ変わったのです。そのため、そもそもの開発コンセプトとしては円すい形よりもウェーブフィルターの使用を前提としたドリッパーであると言えます。
ウェーブとORIGAMIを飲み比べ
このように、ドリッパーの歴史ひとつをとっても、その時代その時代のニーズや流行りに合わせて開発されてきた歴史があります。
特に、ORIGAMIドリッパーはサードウェーブコーヒーの浅煎り焙煎豆を使用するロースターで使われることが多く、もともと炭酸ガスが少なく、ドリッパーの底面にたまりやすい浅煎り豆とORIGAMI&ウェーブフィルターの「ためる」構造の組み合わせは、抽出効率が上がりづらい浅煎り豆にとてもよくマッチしました。
ORIGAMIドリッパーは間違いなく良いドリッパーですし、そのユニークさもぴか一ですが、そこに至るまでにいろいろなドリッパーが存在し、ORIGAMIとは違うユニークさを持ち合わせています。
当店では、国内メーカー全社のドリッパーを取り扱いしていますので、ぜひお越しいただける際はお手にとって、可能であればご自宅で飲み比べなどもやっていただけると幸いです。
ちなみに、ご自宅でそんなにドリッパーをいくつも持てないよという方は、「ドリッパー飲み比べ講座」も当店で実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。