ペーパーレス[フィルターレス]ドリッパーと呼ばれるドリッパーがあります。
簡単に言えば、ペーパーフィルターを使わないドリッパーのことで、一般的にはステンレス製の金属フィルターや、ネル(布)を使ったネルフィルター、陶器を使ったセラミックフィルターなどがあります。
これらのドリッパーはペーパーフィルターを使わないので、エコだと言われており、私たちもよく「ペーパーレスのドリッパーってどんな特徴があるんですか?」と言われます。
そこでこの記事では、それぞれのドリッパーを比較しながら、どんな特徴があるかをお伝えします。
ペーパーレスドリッパーに共通する特徴
まず、それぞれの違いを説明する前に、ペーパーレスドリッパーに共通する特徴をお伝えします。それは、「コーヒー豆が持つオイル分をコーヒー液にも落とす」ということです。
コーヒー豆は他の豆類と同様に、コーヒーオイルと呼ばれる油分を持っています。コーヒーオイルはコーヒー豆を焙煎することによって、コーヒー豆の中からにじみ出てくる成分ですが、UCCによると、なんとその量は焙煎されたコーヒー豆の約15%にもなるとのことです。
焙煎する前の「生豆(なままめ)」と呼ばれる状態のときは、およそ油っ気など感じられない見た目ですが、実はコーヒーはもともと油脂分を含んでおり、焙煎したコーヒー豆の約15%を占めると言われています。
コーヒーオイルとは?豆の油脂分の役割とオイルを含むコーヒーの楽しみ方そもそも「コーヒーオイル」って? コーヒー豆の表面のテカテカ油、カップの中の液面に浮かぶ油膜……コーヒーを淹れたり飲んだりする時に気になったことがあるのではないでしょうか? 「飲んでも大丈夫なの?」と身体への影響を不安視 ...
さて、このコーヒーオイルは、実はペーパードリップでもまったく出てこない…わけではありません。実際、皆様のなかにもコーヒー液の表面にテカリがあるのを見たことがある方もいらっしゃるでしょう。
ですが、ペーパーフィルターを通しているぶん、コーヒーオイルはペーパーフィルターに吸われます。そのため、ペーパーフィルターを使わないペーパーレスドリッパーのほうがコーヒーオイルを感じやすいということです。
コーヒーオイルは香気成分を多く含んでいるため、コーヒーオイルが多いペーパーレスドリップのコーヒーはコーヒーの香りやフルーティさをよく感じられます。また、場合によってはオイル感が多いため、ボリューム感を感じやすくもなるでしょう。
一方で、古い酸化したコーヒー豆をペーパーレスで使ってしまうと、その酸化したオイルまで液体に入り込んでしまうというデメリットもあります。ペーパーレスドリップはコーヒー豆が持つ成分をペーパーフィルターに比べて液体に落とすため「コーヒー本来の味」と言っておすすめする方もいらっしゃいますが、そのデメリットも知っておくべきポイントです。
金属フィルターの特徴
金属フィルター独自の特徴は主に2つ。
- コーヒーの液体に微粉が落ちる
- 素材やメッシュによって味わいが全く異なる
ということです。まず、金属フィルターはドリッパーのメッシュのすき間から抽出したコーヒー液が流れ落ちるため、ネルやセラミックと違い、微粉(細かい粉)が液体に落ちやすい性質があります。
最近では、この微粉が落ちづらいダブルメッシュ(二重構造)フィルターなども開発されていますが、それでも完璧に微粉を防ぐことはできません。
微粉が液体に落ちる最大のデメリットは、食感の悪さです。ザラザラとしたコーヒー粉感を液体に感じるため、人によっては味わい以前にこの食感が苦手という方もいらっしゃいます。
ただ、微粉が落ちるデメリットがないわけではありません。微粉が液体に落ちると、微粉自体もコーヒーオイルを持っているため、コーヒーの香りやフレーバーはより感じやすくなります。
メッシュの粗い金属フィルターは微粉が多くなる代わりにコーヒーのフレーバーをより感じやすくなるでしょうし、メッシュの細かいフィルターはよりペーパードリップに近い味わいになるでしょう。
また、金属フィルターはメッシュの細かさや粗さ以外にも、メッシュのすき間のあけ方にも、メーカーごとの違いがあります。
安価なドリッパーだと点描で穴をあけただけのタイプもあったりしますが、このタイプは目詰まりを起こしやすい特徴があります。また、点描で打ったわけでなくとも、やはり目が細かいフィルターやダブルメッシュなどのフィルターは粉が残りやすく、目詰まりを起こしやすいようです。
ただ、先ほどお伝えしたように、目詰まりを起こさないようにただ穴を大きくすれば、微粉が増えすぎるという問題もあります。ひとくちに金属フィルターと言っても、メッシュの打ち方はメーカーのこだわりが見えるポイントなのです。
色々な種類がありますが、金属フィルター初心者におすすめなのはCORESの金属フィルターです。東京の丸山珈琲と共同開発したドリッパーだけあり、目詰まりを起こしづらいうえに、コーヒーオイルもしっかりと感じられる作りになっています。
金属フィルターらしい風味を味わいたいのであれば、まずは1個持っておいて損はないドリッパーです。
ネルドリッパーの特徴
ネルドリップは今やあまり巷のカフェ・コーヒー専門店で見かけることは減りましたが、本来のドリップコーヒーはこのネルフィルターを使います。
それを家庭用に、簡単に淹れられるようにしようと当時のMelita社によって作られたのがペーパードリップです。
逆に言うと、ネルドリップはご家庭でカジュアルにやるには、いくつかのハードルがあります。ネルドリップの特徴は下記のとおりです。
- 金属よりは目が細かく、ペーパーよりは目が粗い
- 柔らかい口当たりと甘さ
- 使い捨てではなく、お手入れが必要
まず、ネルフィルターは金属フィルターよりも目が細かく、ペーパーフィルターよりも目が粗いという特徴を持っています。それによって、コーヒーオイルは液体に落ちるのですが、微粉は液体に落ちないという絶妙なバランスになっています。
すると、味わいとしては、ペーパーフィルターよりもコーヒーオイルを含むぶん、リッチな食感を持っていたり、コーヒーの香気成分が持つ甘い香りを感じやすくなるため、甘いコーヒーに仕上がりやすくなるのです。
とはいえ、ネルもメーカーごとに特徴があり、ネルならどれも同じ味というわけではありません。縫い方によってメッシュの細かさに違いが出てくるため、ネルファンのなかには手縫いをするという方もいらっしゃるぐらいです。
さすがに本記事を読んでいる方がいきなりそのステップはハードルが高すぎるため、まずは既存の製品を使われるのがおすすめです。安価で手に入りやすいのは、HARIOやKONOといった大手メーカーのネルフィルターあたりだと思われます。
ただ、ネルフィルターはペーパーフィルターのように、買ってきたらその場ですぐに使えるというものではありません。ネルには初回のお手入れと、その後の継続的なお手入れの2つが必要です。
まず、買ってきた初回の時には、ネルにノリがついているため、お湯で煮てノリを落としてあげる必要があります。
説明書にはふつうのお湯でと書いてありますが、コーヒー屋のなかには、この時にコーヒー粉を一緒にお湯に入れて煮る人もいます。ネルにコーヒーオイルを吸わせるためです。
買ってきたばかりのネルフィルターは、コーヒーオイルを吸っていないため、そのままドリップをしてしまうと、コーヒーから抽出されたコーヒーオイルを吸ってしまいます。それを防ぐための方法というわけですね。
ネルには、こうしたネル自体を育てる楽しみもあります。
ただ、コーヒーオイルを吸ったネルは、水洗いしてそのまま乾燥させてしまうと、吸ったオイル分が酸化してしまいます。そこで、使った後のネルは水につけて保存してあげる必要があります。水はもちろんつけっぱなしだと水の性質が変化し腐る可能性もあるので、定期的に入れ替えが必要です。
こうして考えると、ネルドリップからペーパードリップが生まれたことで、どれだけ家庭で「ドリップコーヒーを淹れる」ハードルが下がったかがわかるかもしれませんね。
ただ、ネルにはほかの素材にはない魅力がありますし、ネルドリップならではの淹れ方などもあったりします。他のフィルターにはない大変さや手間があるぶん、新しいドリップコーヒーの世界に出会える可能性のある淹れ方のひとつです。
セラミックフィルターの特徴
セラミックフィルターは今回の3種の中では、比較的新しいやり方です。セラミックのドリッパーをまるで浄水器を通すかのようにコーヒー液が落ちてくるドリッパーで、まだまだ作っているメーカーもそう多くありません。
セラミックフィルターの特徴は以下の通り。
- ネルに近いやさしい味わいと甘さ
- 浄水器のように目に見えない不純物を通さない
- 目詰まりを起こす前提で作られたドリッパー
まず、セラミックフィルターはネルと同じように、金属フィルターよりは目が細かいため微粉を落とさず、ペーパーフィルターよりは目が粗いためコーヒーオイルは液体に落とすというバランス型のドリッパーです。
この2つはまさにネルと共通しているのですが、ネルはコーヒー粉の蒸らしなどに合わせてネル自体が膨らんだりするのに対し、セラミックフィルターはドリッパーがサイズを変えることはありません。
蒸らしは、コーヒー粉と粉の間にすき間ができることによって、コーヒー液の抽出を促すプロセスですが、その点でネルのほうが抽出効率がよく、ボリューム感などに関してはネルのほうが強いよう。逆にセラミックはクリーンで柔らかい味わいが特徴的な印象です。
また、セラミックフィルターは水を通すことで浄水器のように使うこともできます。
フィルター不要な繰り返し使用できるエコなフィルターのセラフィルターは、数ミクロンの穴が無数にある多孔質セラミックで作られ、遠赤外線効果とセラミックスの力で水のカルキ臭や不純物を取り除きます。
ITEM – 「セラフィルター」39arita.jp 公式サイト
こうした力も働いて、よりクリーンな味わいを楽しむことができるドリッパーになっていると言えるでしょう。
一方で、セラミックフィルターは不純物や微粉を必ずブロックしてしまうため、他のドリッパーに比べると必ず目詰まりを起こす作りになっています。
もちろん数回の使用で目詰まりを起こすわけではありませんが、定期的なメンテナンスが必要です。セラミックフィルターが目詰まりした際には、ガスコンロで火にかけて不純物を焼き切ってしまう必要があるのです。
ユニークなドリッパーではあることは間違いありませんが、ネルとはまた違うところで、手間のかかるドリッパーでもあります。
まとめ
今回の記事をまとめると以下の通り。
- ペーパーレスドリッパーは共通してコーヒーオイルを落とす
- 金属はメッシュによって微粉とオイル感のバランスが変わる
- ネルはまったりとした味わいが出せるが手間もかかる
- セラミックはネルに近い味わいで定期的なメンテが必要
以上です。
特に金属フィルターなどは実際に手に取ってみてみないと、点描の打ち方などはネットでなかなか分かりづらい部分もあるかと思われます。ここでおすすめしたドリッパーをとりあえず買っていただくのも構いませんし、もっと自分の目で選んでみたいという方は、ぜひ当店へお越しください!
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